2025.05.22 万博会場
EXPO KYOTO MEETINGが開催されました!~後編~
2025年4月23日(水)、大阪・関西万博会場内のEXPOホール「シャインハット」で、「EXPO KYOTO MEETING ~和のこころと地球の未来~」が開催されました!京都の伝統文化のステージや、ユース世代による元気いっぱいのパフォーマンス、さらにはAIや環境、文化について語り合うトークセッションまで、一日を通して京都の「今」を感じ「未来」を考える見どころ満載のイベントとなりました。こちらのレポートでは「EXPO KYOTO MEETINGが開催されました!~後編~」をお届けします。
「EXPO KYOTO MEETINGが開催されました!~前篇~」はこちら
目次
第4部「人のいのちと地球の健康」
「宇治市」×「京都アニメーション」
第4部では、紫式部ゆかりのまちである宇治市が制作したPRアニメーション「うじには物語がある」が上映されました。手がけたのは、京都が誇るアニメ制作会社・京都アニメーションです。
動画は、宇治を訪れた主人公が、「見返りうさぎ」を追いかけながら宇治のまちを巡るというもの。かつては菟道と書いてウジと読んでいたのだとか。この地と縁の深い兎が、ナビゲーターとして宇治を案内します。
牛車と自動車が同じ道を走るなど、様々な時代と現代が交錯するちょっと不思議な世界。言葉は無く、映像と音楽で宇治の名所やそこに暮らす姿が丁寧に描かれています。6分という短編ながらも、宇治の魅力がぎゅっと詰まった、まさに行ってみたくなる映像作品。ぜひ動画をご覧ください。
【京都アニメーション ×「紫式部ゆかりのまち宇治」PR動画】「うじには物語がある」
第5部「いこうKYOTO ~世界へ未来へ平和へつながるステージ~」
「日本人の忘れ物」
第5部で披露されたのは、寺田宜弘ウクライナ国立バレエ芸術監督がプロデュースした、寺田バレエ・アートスクールとウクライナ国立バレエ プリンシパル Anastasiia Shevchenko氏、そしてコンテンポラリーダンスグループ「Dance Barbizon」による特別パフォーマンス。京都市の姉妹都市であるウクライナ・キーウ市には京都庭園があり、春には桜が咲き誇る名所として親しまれています。今回のステージでは、3つの演目を通して、「日本人が忘れかけている大切な心」を表現しました。
今回のイベントのために来日したウクライナ国立バレエのプリンシパルダンサーによる演目では、戦争で苦しむウクライナの人々の感情が、静かに、けれども鋭く観客の心に届く、魂の叫びを感じさせる踊りでした。心を惹きつけて離さない圧巻の踊りの数々に、観客からは温かい拍手が送られ、心に残るひとときとなりました。
トークセッション
濃密な議論が交わされた全5セッションをご紹介します!
第1セッション「いのちとこころが創る文化と環境」
「"いのち"と"こころ"の違いは何か」というユースたちからの問いかけのもと、いのちとは何か、こころとは何かを考えました。
"こころ"は自分と他者との間に生じるものであり、"いのち"も"こころ"もつながっている、という話とともに、京都で考える意義にも言及。京都は様々な時代の文化の名残りがある「過去を捨てていない場所」であり、現代人が考えるための材料がたくさんあると語られました。
- 登壇者
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山極壽一氏(総合地球環境学研究所所長)
寺田宜弘氏(ウクライナ国立バレエ芸術監督
中村桂子氏(JT生命誌研究館 名誉館長)
エゴ・レモス氏(東ティモール環境活動家) - ファシリテーター
- 浅利美鈴氏(総合地球環境学研究所 教授)
第2セッション「ファッションと伝統の未来」
消費社会の現代における伝統の在り方を模索。ファッションの業界では、皆が日本に勉強に来るそうで、長く受け継がれている京都の伝統はラグジュアリーブランドそのものだ、という話がありました。
また、消費者が"良いものを長く使う"だけでなく、生産者も"地域に誇りを持ち、良いものを創り続けていく必要がある"と、双方の視点から持続可能な未来に向けた議論が交わされました。
- 登壇者
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Kasia Michniewska氏(ポーランド環境実業家)
Tiffany Godoy氏(Vogue Japan編集長)
高谷健太氏(株式会社山本寛斎事務所代表取締役)
Showko氏(陶芸家) - ファシリテーター
- 村山和正氏(合同会社 京都村正代表)
第3セッション「地域からつながる未来~地域資源と共生への道しるべ~」
「京都北部の地域資源が住民ではなく観光向けに使われている」というユースの問題提起からスタート。
地場産業が衰退する現代の課題は、地域資源の持続可能性だけでなく、担い手の確保も重要であることが指摘され、働くとは何のことなのか、生きること・幸せとは何かを改めて考える機会となりました。
- 登壇者
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梅川忠典氏(リージョナルフィッシュ株式会社 代表取締役社長)
桑村祐子氏(株式会社和久傳 代表取締役)
山添藤真氏(与謝野町長) - ファシリテーター
- 中山良氏(京都府商工会青年部連合会会長)
第4セッション「『百寿社会』のデザインとウェルビーイング」
ただ長く生きるのではなく、幸せに長生きするにはどうすればよいのかを議論。長寿の秘訣の一つは、新しいことに取り組むことであるといった話の他、「高齢者という人間はいない。みんな一人一人の人間」という言葉が印象的でした。 また、ユースに向けて、「おじいちゃん・おばあちゃんの話を聞いたことがあるか。じっくりと話を聞くと、他人事ではなくなる」とメッセージを伝えました。
- 登壇者
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石川善樹氏(公益財団法人Well-being for Planet Earth 代表理事)
的場聖明氏(京都府立医科大学大学院 医学研究科循環器内科学 教授・副学長)
Cecilia Ekholm氏(北欧パビリオン スウェーデン政府代表) - ファシリテーター
- 浅利美鈴氏(総合地球環境学研究所 教授)
第5セッション「人間とは、いのちとは何か~テクノロジーと人間が共存する未来~」
「人間とは、いのちとは何か」をテーマに展開されたトークセッションでは、妙心寺派春光院の副住職・川上全龍氏がファシリテーターとなり、東京大学総合文化研究科広域科学専攻教授の池上高志氏、未来学者のAmy Webb氏、そして朝日焼十六世窯元の松林豊斎氏という、異なる分野の3人が登壇。人工知能が急速に発展する中で、人間とは何かを様々な角度から考えました。
池上高志氏は、ChatGPTと接続したアンドロイドが「自由に行動していい」というプロンプトのもと、独自の判断で掃除を始めたエピソードを紹介し、AIの主体性や意思の可能性について言及。セッション終盤にはユース世代の高校生たちが登壇し、AIと人間の違いや、自分らしさ、死の概念など、率直な感想や質問を投げかけました。
陶芸家の松林豊斎氏は、土との対話から生まれる器づくりの感覚を語り、人間もまた、周囲の複雑な環境との関わりの中で形づくられていくものだと語りました。未来を担うユース世代にとって、そして会場の聴衆にとっても、テクノロジーとの共存を真剣に考える、有意義な時間となりました。
- 登壇者
- 池上高志氏(東京大学 総合文化研究科広域科学専攻 教授) Amy Webb氏(ニューヨーク大学 未来学者、作家) 松林豊斎氏(朝日焼 十六世窯元)
- ファシリテーター
- 川上 全龍(同若手部会「EXPO KYOTO」メンバー、臨済宗妙心寺派本山塔頭 春光院 住職)
閉会式
閉会式では、大阪・関西万博きょうと推進委員会座長の山極壽一氏が高校生たちの発表を受けて、「セッションの内容をしっかりと理解し、感じ取ってくれたことが伝わってきた。セッションをやって本当によかった」と語りました。
さらに、「歌は心の叫び、踊りは体の叫び。叫ばずにはいられないのは、訴えたいことがあるから。それは目に見えないものへの訴えであり、その手段は文化によって多様に表現される」と述べ、京都の伝統や芸術、ものづくりの本質にも言及。「未来の社会をデザインしていくのは、君たちユースの世代だ」と語りかけ、未来への希望を託しました。
今回のイベントで司会を務めたのは、西京高校放送部の生徒の皆さん。万博会場でのイベントという大舞台に初めは緊張の様子を見せながらも、堂々とした進行で見事に務め上げました。生徒たちからは、「緊張したけど、終わってみればいい経験になった」「京都の魅力をあらためて知ることができた」など、達成感に満ちた感想が語られました。
ユースステージ
続いては、高校生ユースによる特別ステージ。京都の高校生の地域アドバイザーたちが、1泊2日の京都観光ルートを提案する発表会が行われました。
「海の京都」「森の京都」「竹の京都」「お茶の京都」のエリアごとに、観光名所だけでなくランチやカフェ、宿泊施設までを含めたプランを考案。それぞれに「春にゆったり楽しむ」「体験型ツアー」などのコンセプトを設定し、「お茶の京都」では抹茶ソースのたこ焼きといったユニークなグルメを紹介するなど、京都の奥深い魅力を発信しました。
発表会のあとには、京都大学大学院総合生存学館教授・山敷庸亮氏による演奏。京都の魅力を歌詞に込めた楽曲と、未来を感じさせるシンセサイザーの音色が響き渡り、「上を向いて歩こう」では皆で合唱。京都両洋高等学校吹奏楽部も再び登場し、会場全体が一体となってフィナーレを迎えました。
最後はユース世代、出演者、関係者全員がステージに集合。
京都の豊かな魅力を再発見し、未来について深く考える一日となったEXPO KYOTO MEETING。世代や国境を越えた対話が、明るい未来を感じさせてくれたイベントでした。
来場者の声
一日を通して多くの人が訪れたEXPO KYOTO MEETING。当日の来場者の方々からも楽しかったとのコメントをたくさんいただきました。
「吹奏楽部の子たちの演奏に元気をもらって、ちょっと泣きそうになりました」
「風呂敷ってこんなに便利なんだと初めて知りました。これから使ってみます」
「たまたま立ち寄ったのですが、踊りや太鼓は素晴らしかったです。京都に行ってまた見たいです」
ご来場いただいた皆様、ありがとうございました!
京都の魅力はまだまだたくさんあります。ぜひ、京都へのお越しをお待ちしています!